2012/10/9 決算特別委員会 傍聴記

 みなさん、こんにちは。調布市民です。初めて私が江戸川区を訪れたのは、江戸川区の花火大会でした。当時は学生ながら、花火以上に江戸川区の方々の活気と街の盛り上がりを身に染みて実感できたことを覚えています。さて、私がふたたび江戸川区を訪れたのは、花火ではなく真面目なものです。10月のはじめから中頃にかけて、江戸川区と江戸川区議会は決算特別委員会審査というものをやっており、9日は平成23年度の福祉費の審査を行っていました。そこで、福祉に興味のあることと、江戸川区の外の市民であるからこそ別の視点から江戸川区政を観ることが出来るのではないかという期待から、江戸川区の決算特別委員会の傍聴に参加させていただきました。今回は、つたない内容ではありますが、その時の感想を記させていただきたいと思います。

 

 江戸川区の決算特別委員会の会場は、江戸川区役所の4階にあり、厳かというよりは一般的な会議場でした。そこに行くまでに、3階で基本的な個人情報を記したあと、一般傍聴に参加するための名札をもらいます。江戸川区の職員の方は、とても親切でした。素人の私を受付の段階から会議場に入るまで、面倒を見てくださって、本当に感謝します。「お役所仕事」と揶揄される公務員の所作ですが、このときから終わりまで一切見られなかったことが、私の中での大きな感動でした。会議場の中は、一番前にモニターがあり、モニター側の会議場半分に区議会議員の決算委員会の方々が、そして後ろ半分に江戸川区の職員の方々が座り、そのさらに後ろの10席のパイプ椅子に一般傍聴人が座ることになります。そして、お互いに会議場の半分を陣取った委員と役人の方々が顔を合わせて審議を行うわけです。委員の方々は、区議会議員ゆえに会派があり、その会派の人数に比例して質問時間が配分されています。一方、説明を行う区役所サイドには制限時間はありません。委員サイドの質問の制限時間は前の大きなモニターに表示されます。区役所サイドには、はっきりと役職は分かりませんが、説明責任を負う部長級や課長級の方々、そのほかにも一般の職員の方々もいたように思います。会議は昼休みや2回の休憩を挟んで、午前10時から午後5時半まで続きました。

 

 まず、傍聴に際して感じたプラス面での印象について記したいと思います。私は、学生時代に行政学という学問を学んでいた時期がありまして、決算に関しては「行政の決算報告を議会に提出し、審議・承認される過程」という説明を受けていたため、てっきり、今回は区役所サイドのおのおのの報告を粛々と委員サイドが「承認」・「拒否」と割り振っている冷たいイメージがありました。しかし、実際の決算委員会では、「承認」の言葉ひとつもなく、どちらかというとお互いの状況報告や審議をしていました。区職員の方々の委員サイドへの説明も「堅い」「難解」といった印象は少しも無く、福祉の各施策における現場での状況やケースの細かな説明を分かりやすくしたものでした。もちろん、決算特別委員会の本来の目的は「審査」ですが、傍聴する市民からすれば、江戸川区民を代表する委員や江戸川区民と各施策を通じて最前線で接する江戸川区職員の視点からの「区のリアルタイム」、「区の抱える最新の問題・課題」を審議を通して知ることが出来ることが一番のメリットではないのかなと感じました。

 

 一方、一日を通して感じた会議でのマイナス面は、構造の問題です。審議それ自体には充実感を感じたのですが、審議をする環境が十分なのかといえばそれは疑問です。長い審議の間、区職員の方々の大半はパイプ椅子に座っています。傍聴席についても同様です。また、会議の前半3時間あまりに関しては完全に締め切られた環境で審議が進んでいました。このような環境で、十分な会議を行おうとする意志は、なかなか根性論といったものだけで貫けるものではありません。少しの工夫で、根性なくとも会議が充実して進むことはあると思います。区政の中心的で大事なことを審議する場ですから、予算なり気を回すこともあってもいいのではないかと感じます。そうはいっても、区役所職員の方々に船を漕がれる方がいらっしゃらなかったことに驚きです。根性や社会人の気概だけで貫けるものではありません。

 

 最後に、一市民としての意見を述べたいと思います。最近、といっても数十年前からの話ですが、「市民参加型の政治」というものが声高に叫ばれるようになりました。ここでいう、市民参加型というものは「市民も直接、政治の主体となる」という意味でのものであり、そのために様々なシンポジウムやイベントが行われてきたと思います。しかし、どうしてもそのような市民参加型の政治はハードルが高く参加しようと踏み出す方が多くないのが現状です。そういう意味で「やじや発言が許されない」委員会の傍聴は、半日一言も喋らずに区政について一生懸命市民なりに考えることができるいい機会だと思います。自らが払った血税が、どのような意図で利用され、どのように人々の生活に還元されているかは、区の発行物や統計だけでは分かりません。委員会では、行政がこれまでどうしてきたか、またこれから行政がどのように区民の生活をよりよくしていくべきか、そのような議論が血の通った言葉で交わされます。発言主体にならなくても、傍聴という形で政治参加は可能です。私が思うに、区の社会問題や都市問題について知り、深く知りたいと感じたときに政治参加は始まります。政治参加というとハードルの高いものに感じますが、自身の生活を知るという意味で、是非委員会の傍聴をされてはいかかがでしょうか。特に、福祉という分野は、政治や行政を考える良いきっかけになると思います。