江戸川区議会 決算特別委員会レポート 「江戸川区・決算特別委員会傍聴記」傍聴7日目

 

 今回のレポートは元日本経済新聞(日経)政治部記者

 政治ジャーナリスト・国会ウォッチャーであられる

 宮崎信行(みやざき・のぶゆき)氏にお願い致しました。

 

 宮崎氏ブログ
   ◎無料ブログ「国会傍聴記by下町の太陽」(NTTレゾナント社の「gooブログ」で提供)

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本文の内容と掲載した写真は一切関連がございません。

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こんにちは、宮崎信行です。

江戸川区民ではないし、普段は国会傍聴を専門としている筆者だが、依頼もあり、江戸川区議会の決算特別委員会を傍聴した。

 

なかなか合理的かつ水準の高い審議で驚いた。

 

 この日は、区長から今後の小中学校の建て替えに関する長期計画について、

「10年以内に小中学校の統廃合の議論は避けられなくなる」との答弁が出て、

 

自民党のおそらくベテランであろう議員から「いやあ区長、以前の答弁と比べて変わったもんですね。驚きました」との発言がでた。

とはいえ、江戸川区の直面する課題や、決算書の前提になる財政状況などはてんで分からないので、後は審議形式に関する感想文になることをお許しいただきたい。

 

まず、国会との違いで驚いたのは、委員席にモニターがあること

 

何か資料類を使って委員が質問するのかと思いきや、審議が始まると、モニターは各会派の持ち時間の残り時間が出るだけのようでがっかりした。

 

 が、もう一つ出ていた表が、決算書の項目であり、その「項」(例:小学校)、そしてさらに細目として「目」(例:学校施設整備費など)を表示していて、その順番に委員長が議事を進めていることに気付いた。

 

そして、その議題順に各会派がいわば「ルーレット方式」で、質問していく。私が日経記者時代に傍聴した横浜市議会や神奈川県議会の常任委員会は、国会同様に各会派に持ち時間を渡しきりにしていた。項目順に各会派が質問できる形式には大変驚き、感心した

 

とくに大会派が先に質問したことについて、小会派は「さきほども出ましたが」と関連づけて質問できるので、小会派は初めから少ない持ち時間を節約できる。当然、総審議時間も節約になる。

 

もう一つ驚いたのは、執行部の答弁席の後ろに、数十人の職員がすわっていたことだ。

ちなみに答弁者は、教育長と教育委員会事務局の指導室長(兼教育研究所長)、教育推進課長、学務課長、学校施設担当課長が答弁し、独立行政委員会である教委ということもあり、区長が答弁するのは少なかった。

ふだんはもっと多いのだろうと思うが、区長から前述の大きな答弁が出た。
 

横浜市議会や神奈川県議会では委員室にいるのは、課長以上だった。江戸川区議会では、おそらく教育委員会事務局のほぼ全職員が傍聴しているように思えた。ただ、この職員傍聴人と思っていた人の中でも、

 こうやってチェック機関である議会の決算審査が、直接執行部局の職員の耳に伝わるのは合理的だ。

 

第1委員会室から第3委員会室までの間仕切りをとり、ひとつの委員会にできる構造もいい。

 

ところで、江戸川区の女性職員がおそろいの制服姿なのには、驚いてしまった。

 

10時の開会を前に、答弁席の教育委員会事務局の幹部、職員傍聴人、そして議員がそろい、最後に区長が1人で入場してきて着席するとおもむろに審議が始まった。

国会では、大臣や答弁者は審議開始の数分前には着席していて、野党議員の方が後から入ってきて着席して審議が始まる。

 

この辺に総理大臣を議員がつくる「議院内閣制」の国会と、区民が区長を選び、区民が区議を選ぶ「二元代表制」にもとづくチェック機関である江戸川区議会の違いを感じた。

 

 このほか国会は二院制でもあり、いろいろややこしい。ちなみに国会ではまだ平成21年度の決算審査は始まっていないが、江戸川区議会では平成22年度の決算審査は残り1日間ということで、これを平成23年度予算に反映できる。

 

当たり前のことが国会ではできておらず、二院制の手間を考えても、やはり、こういったところも国の仕事は地方に分権していかないと国が持たないという感じがする。

 

また議員はチェック者であり、執行部はその答弁により地位を追われることはまずないだろう。むしろ区長との関係の方が大事になる。

そのため、議員も党利党略や自らの出世にかかわる駆け引きをする必要がないので、

20年単位の小中学校の改築計画や、自民党安倍政権で改正した日本国教育基本法の学校現場での反映、区民から直接要望を受けていると思われる要請などをざっくばらんにぶつけ、執行部もあまり言質をとられることを心配せずに、

長時間にわたって素直な答弁ができる。

とくに、決算書を「項(例:小学校の部)」と「目(例:教育指導費)の1番から順に委員長が議題にし、大会派から小会派の順に質問した委員が総持ち時間の中で質問していく点。

この順が何度も何度も続いていくいわば「ルーレット方式の審議」は初体験。

 

ルーレット方式なので、大会派が先に質問した内容と重複した場合も、小会派が「○○委員も質問しましたが、」と断って、細かい説明を省いて本筋だけ質問するので、時間も節約になるし、小会派もいちいち予定していた質問を変更しないでも済む。

 とても合理的なよい審議を見させてもらった。

一般傍聴席にも、お子さん連れのお母さんが述べ10家族ほど来ていたし、年配の男性が長時間座って聞いていた。もちろん、筆者は江戸川区という街が今置かれている状況は分からないし、区議会も初めての傍聴で、他の日は違うのかもしれない。

ただ、江戸川区民も一度傍聴に行ってみる経験は必要だけど、平日の昼間は時間がとりずらい。

 

ただ、とりあえずこの議会ならチェックを任せておいて大丈夫なのだと感じる。

ちょうど、参議院決算委員会の筆頭理事に高校の先輩がついたので、この体験は知らせてみたいと考える。

滝沢やすこ区議からまた依頼があれば、他の委員会・本会議も見てみたいし、他の区議会がどういう形式なのか、時間があれば見に行きたいと感じた。

 

帰りに新小岩駅前の帰宅ラッシュの人々を見て、区議会の審議の充実ぶりが街の発展につながっているのではないかと感じざるを得なかった。

 

自分の区議会はケーブルテレビでしか見たことがないのだが、委員会の審議ぶりに違いがあるのではないかと気になって仕方がない、新小岩駅前の光景だった。