江戸川区議会 決算特別委員会レポート 「江戸川区・決算特別委員会傍聴記」傍聴5日目

レポータ志水さん
レポータ志水さん

みなさまはじめまして。

 

古川さんに続いて、中の人の依頼を受けまして10月12日と13日のレポートを担当します、志水です。

よろしくお願いします。

 

さて傍聴に出かける前日、江戸川区議会のサイトを見ていたら、「本会議当日はライブ中継します」と書かれてあります。「それなら傍聴しなくても済むじゃん!」と思ったのですが、これはまったくの早とちり。中継されるのは「本会議」だけで、今回の決算特別委員会など、各委員会の中継はないのでした。てなわけで、区役所へと向かいます。

傍聴受付で配布された委員名簿。所属議員全員が出席する会派とそうでない会派があるようです。
傍聴受付で配布された委員名簿。所属議員全員が出席する会派とそうでない会派があるようです。

<傍聴はつらいよ>

 

区役所西庁舎3階の傍聴受付にて、住所氏名電話番号を記入し、傍聴者用の名札をもらいます(もちろん帰りに返却)。すると、「決算特別委員会審査日程」「審査科目別決算特別委員会委員名簿」(ともにA4サイズ)の配布がありました。資料が配布されない中、委員名簿だけでも傍聴の補助にはなります。ありがたく頂戴して、4階にある委員会室へ。

 

本日12日の審査科目は「福祉費」。江戸川区ではこれを大きく「社会福祉費」「児童福祉費」に分けています。社会福祉費には高齢者福祉、障がい者福祉、生活保護、就労支援、発達障害支援といった内容が、児童福祉費には児童虐待対策、保育園・幼稚園問題など、文字通り子どもに関する内容が含まれます。

 自治体の予算の中でも、有権者にとってはかなり身近に感じる分野だと思うのですが、この日の傍聴者は、私以外にひとりだけ。なんだか拍子抜けです。

西棟1階のエレベーター脇に掲示されている案内板。これに気づいても、受付は3階だとはわかりませんよね。
西棟1階のエレベーター脇に掲示されている案内板。これに気づいても、受付は3階だとはわかりませんよね。

私が子どもの頃から、テレビに出てくる元国会議員の毒舌タレント(個人的な疑問ですが、毒舌な芸風の議員はなぜみんな保守政党なのでしょうか?)が「バラマキ福祉」などと槍玉に挙げてきたのと関係があるのか、福祉に関する国家予算は、増減がかなり頻繁に行われる印象があります。それは江戸川区でも同様と見え、全体的に熱を帯びた質疑応答が展開されました。

 

このレポートでそのすべてをお伝えすることはできませんが、項目だけでもいくつかあげていきます。社会福祉費のくくりでは、生活保護の実態、成年後見制度(注1)やリバースモーゲッジ(注2)の認知度が低い、熟年者が自発的に運営している「くすのきクラブ」の加入促進、シルバー人材センターの活用。また児童福祉費では、保育施設への待機児童を減らす取り組み児童虐待の根絶へ向け江東区の事例を見習うべき共育プラザが葛西南地域に無い…などさまざまな課題について、これまでの運営を振り返って改善すべき点、今後の方針や、予算を含めた資金の流れ等々の問題が、全会派の委員から担当各課に向けて投げかけられます。

 

私も、古川さんの3日のレポートにあるように「並べられたパイプ椅子の最後列に座りながら委員や職員たちの顔も見えないまま、会場で交わされている声にのみ集中しながら理解するのはやはり相当にくたびれます。」 というのを実感しました。ここで簡単に位置関係を書いておくと、私のいる傍聴席から見ていちばん奥に、各会派の質問時間を表示する大型モニター、その手前に議長と副議長、さらにその手前の窓側に委員会運営スタッフ、左右3列ずつに中央で向かい合う形で委員席(各会派から選抜された区議さんたち)。その手前が、議長たちの方を向いて陣取る関係各部課の職員さんたち。審査科目によって増減があるものの、ざっと120~130人の職員さんが私に背を向けて座るので、こちらが着席したままでは答弁する課長の顔はもちろん、委員各氏の顔もほとんど見えません。こうした人たちの表情が見えるだけでも、質疑内容がぐっと身近に感じられ、理解もしやすくなるのでは、と思うのは筆者だけでしょうか。ちなみに、私の傍聴した2日間は区長は出席していました。それが普通ですけどね…。

 

注1)成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、判断能力(事理弁識能力)の不十分な者を保護するため、一定の場合に本人の行為能力を制限するとともに本人のために法律行為をおこない、または本人による法律行為を助ける者を選任する制度である。(出典:wikipedia)

 

注2)リバースモーゲッジ(Reverse mortgage)とは、自宅を担保にした年金制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段として注目される。自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を年金という形で受け取る。年月と共に借金が増えていき、死亡時に自宅の評価額と同じになるように調整する。死亡時に金融機関が契約者の自宅を引き取る。 通常の住宅ローン(モーゲッジ)では年限と共に借金が減っていくが、この制度では増えていくのでリバースモーゲッジと呼ばれる。 以下の二つのリスクがある。年金が満額になる時点を越えて長生きする。
年金が満額になる前に死亡する。 (出典:wikipedia)
都道府県の社会福祉協議会では「不動産担保型生活資金」と呼ばれ、江戸川区では「長期生活福祉資金」という名称が使われています。(追記:志水)

区役所北棟入り口の写真。バスはここに着くのです。
区役所北棟入り口の写真。バスはここに着くのです。

<ジョジョに奇妙な答弁>

では、この日とく筆者の印象に残ったやり取りの紹介に入りましょう。これまた古川さんの記述と同様、私も区議会自民党があたかも区役所と一体化しているような印象を抱いていました。しかし、2日間の傍聴後、それは半分正しく、半分誤りである、と認識を改めることになりました。まず12日には、「誤り」の印象を強くしたのです。
というのも、「このまま少子高齢化と階層の二層化が進めば、現状の社会維持は難しい。日本の社会の根幹をなす家庭や社会の絆を回復し維持していくには、成年後見制度等の認知徹底としかるべき運用、低所得家庭生徒向け支援貸付などは充実させる方向でという意見(注3)が区議会自民党から出ていたからです。こうした内容なら、筆者にも大いに頷けるところです。区議会自民党のなかでも渡部正明委員は、12日、13日を通して節目節目で質問を出していました。テレビの「サンデーモーニング」でいえば、故・大沢親分にあたる役回りなのかもしれません。もっとも「他の区でやっているから江戸川区でも良いとは限らない」「高齢者の自立」などという言葉には、若干の違和感を覚えましたが…(そしてそれは13日への前振りであったと、このレポートをまとめている今は感じていますが)。
ところで、就労支援スタッフが増員され、効果も上がっているという質疑は、筆者にも嬉しいものでした。就労者が増えて失業率が下がれば、税収が上向き生活保護の支給を抑えられるわけですから、行政にとっては言うこと無しのはずです。単独のハローワークを持たない江戸川区では(ハローワーク木場は江東区と共同)、ハローワーク木場の分室である「船堀ワークプラザ」と、江戸川区役所の一角の「ほっとわーくえどがわ」が、求職にまつわる各種手続きの主な窓口になりますが、両者とも施設として正直しょぼいです。船堀ワークプラザの管轄は区ではなく東京労働局のようですが、何とかなりませんかねぇ。
タワーホール船堀に入ってもおかしくないと思うのですが…。(注4

 

注3)この記述は、ある委員のひとつの質問を記したものではなく、複数の質問・要望を志水がまとめたものです。

注4足立区では、ハローワーク足立が東京芸術センターという立派な施設と同じ建物に入っています。

中庭にあった庁舎ご案内図。悪くはありませんが、連絡通路がない箇所をはっきり表示してほしいですね。
中庭にあった庁舎ご案内図。悪くはありませんが、連絡通路がない箇所をはっきり表示してほしいですね。

 

この日もっとも盛り上がった?応酬は、日本共産党江戸川区議員団の間宮由美委員の質問に端を発しました。それはおおよそ、「江戸川区立の保育園では、長年新規職員の採用がなく、現状で20代の保育士職員がいない。もっとも若い職員でも30代である。保育経験の継承はきわめて重要なものだが、この観点からもいかがなものか」というものです。

これに対する担当課長の答えは「区立保育園は民間への移管の方向であり、新規の採用はしない。保育経験の継承は、私立保育園(注5)との職員交流で補える」。しろうとが考えても”公立と私立の交流”なんてありえないと思えますが、間宮議員も当然そこを突っ込みます。「公立と私立の職員の交流とは可能なのでしょうか。可能とすればどうやって?」これに対しては「区が仲立ちで話し合いの場を設けていく」程度の返答で、明確な回答はありませんでした。間宮議員は食い下がります。「30代の職員は10年後には40代になる。さらに厳しい環境になってしまう」担当課長の答弁は、わが耳を疑うものでした。「先日行われた区民まつりで、区立保育園の職員さんの踊りを拝見したが、みなさん元気に踊っていた。心配には及ばないのではないか

 

                                                  なにソレ?


答弁の途中で、女性職員の間からも笑いが漏れ、場内のほとんどが失笑

南棟5階の自販機コーナー。豊富な種類の缶飲料がほとんど100円なので、筆者は区役所に来たら必ず寄ります。
南棟5階の自販機コーナー。豊富な種類の缶飲料がほとんど100円なので、筆者は区役所に来たら必ず寄ります。

間宮委員もあまりの回答に唖然としながらも、「23区では江戸川区と中野区だけが新規採用をしていなかったが、来年度からは中野区も採用を決定した。理由は保育経験の継承」と念を押して質問を終えました。
こういうのを聴かされると、なんだか全身から力が抜けます。傍聴に対する遠まわしな嫌がらせなのでしょうか。
ともかく、こうして私の決算特別委員会傍聴初日は終わりました。今日受けた脱力感は、どう処理するのが適切なのか考えつつ、帰路につきました。

 

注5)たとえば ココ をご参照ください。民営化した保育園(今後民営化するものも含む)は、区内の全私立幼稚園と全私立保育園が一体となって設立した「社会福祉法人えどがわ」が運営します