江戸川区議会 決算特別委員会レポート 「江戸川区・決算特別委員会傍聴記」傍聴4日目

こんにちは松江ゴローです。江戸川区の決算特別委員会、4日目は午前中に行われた、 

 

放射線、放射能に関する一括審議を傍聴してきました。

 

2011年3月の福島第一原発事故により東日本各地に放射性物質が拡散して以来、江戸川区が葛飾区や足立区と並び、東京における「ホットスポット」となっていることは、区民の皆さんはすでにご存知のことと思います。

 

 

江戸川区の子供たち
江戸川区の子供たち

 

私自身の知人やご近所を見渡してみても、特に 

小さな子どもを区内の学校に通わせている方に、 

放射線に対して相当な危機感を持っている方が多いのは実感します。 

 

区サイドでは、「放射線の専門家」と呼ばれる科学者の講演会を主催するなどして区民の不安解消に努めていますが、

講師の顔ぶれを見ても無害論・安心論に偏重した人選であることは否めず、その結果として区民の間に、さらなる疑心暗鬼を蔓延させているようにも思えます。

 

江戸川区のそうした現状を反映し、この日午前中の審議は、10人分の傍聴席が9席まで埋まっていました。

江戸川区の公園
江戸川区の公園

江戸川清掃工場の飛灰から「9740ベクレル」検出

 

さる6月27日、江戸川清掃工場でゴミ焼却時に出される焼却飛灰から、都の埋め立て基準(1キログラムあたり8000ベクレル)を超える1キログラムあたり9740ベクレルのセシウムが検出された、との報道がありました。

 

これに関連し、「民主・ネット・えどがわ」の新村いく子委員から「(清掃工場内でゴミ処理作業に従事している)作業員の安全は確保されているのか?」と質問がありました。

清掃課長の答弁をそのまま記すと、「飛灰の放射線量は8000ベクレル超と高いが、工場内の空間線量は1時間あたり0・2~0・3マイクロシーベルトと低い値。作業員には福島第一原発の作業員と同じ格好で作業をしてもらっているほか、作業に従事する作業員ひとりひとりが浴びる放射線の積算量も計測しているので、安全に作業してもらっていると考えている」とのことでした。

 

また、廃棄物や汚泥を高熱で溶かし、その後冷やして固めた物質は「溶融スラグ」と呼ばれ、建設・土木資材用によく使われているそうなのですが、新村委員の質問により、これが東京23区で最もたくさん使用(平成22年度の公共工事だけで1900トン)されているのが江戸川区であることも分かりました。

 

東京都では東日本大震災で発生した瓦礫のうち、来年3月までに岩手県宮古市の瓦礫計1万1000トンを受け入れる計画をすでに発表しています。今後はこれらの瓦礫も江戸川清掃工場で焼却処理され、「溶融スラグ」として区内の公共工事に使われていく可能性がありますが、新村委員はこうした瓦礫の再利用が、「さらに放射能の濃縮を進め、拡散させることにならないか?」との懸念を表明していました。しかしながら区では、「ダイオキシンを封じ込める」など、溶融スラグの建設資材としての特性を現在も高く評価しており、今後も区の公共工事に変わりなく使っていく方針のようです。

 

学校給食は安全か?


3・11以降、江戸川区の公立小中学校では保護者がナーバスにならざるを得ない事件が続発しています。

 

春頃には小中学校の(プール開き前の)プールに放射性物質が降下し、沈殿している可能性が全国的に指摘されていましたが、その後江戸川区が東京23区で唯一、プールの清掃を児童にやらせていたことが判明しました。さらに8月には、セシウムに汚染された稲わらをエサとして食べていた牛肉が、江戸川区内中学校の学校給食に使われていたことも明らかになりました。

 

こうした状況を踏まえ、「みんなの党」の上田令子委員からは「学校給食材料の産地公表や、食材の放射線量計測を区が自主的に行なう考えはないのか?」との質問がありました。

江戸川区と同じようにホットスポットと呼ばれている自治体でも、足立区では1学期のうちに区内の全公立小中学校で給食の産地公表に踏み切っていますし、隣の千葉県市川市ではサーチレーション式シンチレーターを購入し、給食食材の放射線検査を独自に実施しているそうです。

 

そうした近隣自治体や他区の状況を考えれば、これらは江戸川区でも検討に値する提案と思えたのですが、担当課長からは、「風評被害に繋がる」「学校現場に混乱を招く」といった反対意見しか出て来ませんでした。

 

最終的に健康部長から、「前提として、国が責任を持って検査するのが大原則であり、流通しているものについては安全が確認されていると考えている」との答弁があったのですが、問題の給食に使われたセシウム牛も、元はといえば国の検査の網をすり抜ける形で流通していたものです。他の自治体が国に任せていては住民の不安を払拭できないと考え独自の施策を実行していることを思えば、すでに汚染牛を混入させてしまった自治体の見解としては、「呑気すぎる」との印象が拭えませんでした。

なお上田委員からは、学校の社会科見学の行き先として、3・11以降も江戸川清掃工場を選ぶ小中学校が多い、との指摘もありました。

同委員は「こども未来館など他にも社会科見学に適当な施設はあるのに、敢えてこの時期に清掃工場に行かせる必要はあるのか?」と質問していましたが、

これに対する区の回答は、「すべての権限は学校長にある(ので介入できない)」でした。

 

福島原発事故
福島原発事故

 

「原発事故は収束しつつある」か?


放射線問題全般に関して他の自治体よりも取り組み方が鈍い印象がある江戸川区ですが、その背景を探っていくと、どうも多田区長個人の考え方が濃厚に反映されているにようです。

 

この日上田委員に、放射線問題に対応する上での方針を尋ねられた区長は、次のように答えていました。

 

「なるべく正しいと思われる情報を提供すること、不安をいたずらに増幅しないこと。状況を変えることができない(放射性物質を区内からなくすことができない)以上、区民がこの状況に対して冷静な判断ができるような条件を付けるのが行政の役割」

 

また区長は、日本共産党江戸川区議員団の間宮由美委員から、「対策会議を設置する考えはあるか?」と尋ねられた際は、「対策会議を設けるばかりが能ではないし、設けるつもりはない。福島第一原発事故の事故は収束に向かっていることをしっかり認識しなくては」とも発言していました。

 

福島第一原発事故は、本当に区長の言うように収束しつつあるのでしょうか?

事故から半年以上が過ぎましたが、汚染が当初言われていた範囲をはるかに超えて広がっている現実は時を追うごとに明白になっていますし、江戸川区内に限っても、果たしてどのくらいの面積を除染すれば安心といえるのかよくわかっていません。

そうした実情を無視し、ただご自分の願望に根ざして「収束」という言葉を使っているのだとすれば、住民としては憂鬱なことこの上ありません。