江戸川区議会 決算特別委員会レポート 「江戸川区・決算特別委員会傍聴記」傍聴3日目

こんにちは松江ゴローです。江戸川区の決算特別委員会、3日目の審議を傍聴してきました。

 

今日は所要で午後から傍聴したのですが、委員会室に行ってみると区長は一昨日の午後と同様に「公用で不在」今日も区長抜きでの審議が進められていました

 

区長が決算特別委員会よりも優先した公用、というやつが何なのか知りたくて休み時間に秘書課で聞いてみたのですが、「一昨日は東京都の区長会、今日は日本赤十字社の大会に出席するため」とのこと。こういうことをわざわざ聞きに来る区民はあまりいないのでしょうが、秘書課の職員さんの、訝しげな視線が妙に痛かったです。

スケジュール表
スケジュール表

なお、傍聴に通い始めて以来、傍聴者用の資料が何も無いこと連日愚痴々々と書いてきましたが、ありがたいことに今日はじめて、委員の名簿と審議のスケジュール表が受付に用意されていました。まさかここでの愚痴を事務局の方が読んで配布してくれたわけではないと思いますが、委員の名簿があるだけで発言者の名前を特定するのがずいぶん楽になります。事務局の方の配慮に感謝です。

学長 北野 大さん
学長 北野 大さん

学長報酬「120万円」は高いか安いか


今日審議されたのは、平成22年の江戸川区一般会計支出のうち、区民生活費と産業振興費について。前者には、区が平成16年より区民の生涯学習のために行っている「江戸川総合人生大学」という事業がありますが、今日はこれをめぐって、ちょっとした議論がありました。

 

江戸川総合人生大学の学長は、明治大学教授の北野大氏が務めています。大物タレント・ビートたけし(北野武)氏の実兄であることは皆さんご存知のとおりですが、この学長の存在が、「ただのお飾りではないか」との指摘が、一人会派「志士の会」の中津川将照委員からありました。

 

中津川委員の質問に担当課長が回答する中で判明したのは、北野学長が来校するのは年に3回の学長会と自分自身の講義をする時で、その頻度は「年に数回。平均すると月1回くらい」ということ。大学ホームページの学長コラムもほとんど更新されていない、との指摘が同委員からあったので実際に見てみると、たしかに開校以来、ほとんど更新されていない様子です。その一方、北野氏に報酬として支払われている金額は月10万円、年にして120万円だそうで、中津川区議は「安くない額」と評価していました。

 

ところがこの報酬額をめぐって見解が分かれました。担当の課長が言うには、「北野氏がふだん一回の講演でもらっている額からすれば、まったくの薄謝。それなのにこの金額でカリキュラム策定までやってくれているのだから、「ほとんどボランティアのようなもの」なのだというのです。

 

「120万円」が実際のところ高いのか安いか。判断は難しいところですが、学長の考案するカリキュラムが非常に独創的で、かつ人脈を駆使してすばらしい講師陣を引っ張ってきてくれて、その結果、区民の生活を豊かにするだけの講義が行われているのであれば120万円どころか1200万円でも格安だろうと思います。

しかしこの江戸川総合人生大学、開校8年目を迎えていろいろと課題に直面しているのは確かなようです。区議会自由民主党からは「利用者が高齢者に偏っている(現8期生の平均年齢は63・6歳)」との指摘があったほか、みんなの党からも「近年入学希望者が伸び悩み、かき集めている」、との声がありました。

 

個人的な本音を言うと、「そもそも何でこの人が学長なの?」という違和感、なきにしもあらずです。

江戸川区が官製ワーキングプアの温床に?


月1回の来校で120万円を貰っても「ボランティア」と評される人がいる一方で、区民のための仕事を日々こなしながら年収200万円を稼ぐのもやっと、という職員が相当数いることも、今日の審議でわかりました。

 

多田区長の就任以来、江戸川区は財政健全化を推進しており、総務省が定めた財政健全化指標を適用すると、全国一位の健全率とされています。この主要因が人件費の削減によるものであることは区も認めていますが、反面、区職員に占める非常勤雇用者の比率が拡大しているとの指摘が、「民主・ネット・えどがわ」の中里省三委員他から上がりました。

 また江戸川区では、多くの事業を民間に安く委託することによっても経費を削減していますが、これに関連して、日本共産党江戸川区議員団の瀬端勇委員から「公契約条例を導入する考えはないか?」との質問がありました。

 

公契約条例とは、地方自治体が公共事業を民間に発注する際、自治体側が定めた賃金(国の定める最低賃金よりも高く設定される)を受注者に遵守させることを規定した条例です2010年に千葉県野田市で施行されて以来、「不安定雇用増大の責任は、国や地方自治体にもある」との認識から多くの自治体で導入されているようです。

この導入を求めた瀬端委員に対する担当課長の答えは、「江戸川区の場合、(公契約制度を導入している自治体とは)委託する職種も施設の形態も違うので、『当然ながら』検討する考えはありません」というものでした。『当然ながら』という言葉を敢えて付けるあたり、条例へのひそかな反発心すら窺えます。あるいはこう発言することが、不安定雇用者の増加と引き換えに「財健全化率全国一位」という実績を作った、区長への忠誠心の表れなのかもしれません。

 

しかし、この日の審議では、最大会派である区議会自由民主党の委員も瀬端委員と同じ問題意識を持っていることがわかりました。同会派所属で当選6回のベテラン渡部正明委員が担当課長に対して、

「民間活力の導入はけっこうだし、官でやろうが民でやろうがどちらでもいい。だが、その中身を精査しろ。民間に丸投げすることで世の中の3分の1、4分の1が非正規になってしまっても、区のサービスを安上がりにすればいいという考えなら見直すべきだ。あと3年もすれば区長は辞めるし俺も(議会から)いなくなるが、次の世代に繋ぐことを考えなければいずれ(税金を払えるだけの余裕がある区民が少なくなり)税収が上がらなくなる。そういうことを分かっているのか?!」……と、かなり強く詰問する一幕があったのです。

 

一昨日のレポートでは、区議会自民党があたかも役所と一体化しているようなことを書いてしまいましたが、江戸川区議会に対する私の理解は、まだまだ浅かったようです。その点は反省を迫られました。