江戸川区議会 決算特別委員会レポート 「江戸川区・決算特別委員会傍聴記」
皆様こんにちは。松江ゴローと申します。江戸川区民歴2ヶ月のフリーライターです。
今回、ひょんな縁からedogawaくみんフォーラムの中の人から頼まれ、江戸川区の決算特別委員会を傍聴しその傍聴記を書くことになりました。初日は「傍聴記」とは名ばかりの単なる雑感になってしまいましたが、どうぞよろしくお付き合い下さい。
「決算特別委員会」は、江戸川区の1年間の歳入および歳出が妥当だったかについて、20人の委員(いずれも江戸川区議)が区の担当職員に質問しながら審議するものです。平成22年度(平成22年4月から同23年3月まで)の決算は、平成23年10月の3、4、6、7、12、13、17、19の計8日間にわたって審議されます。
●一般会計審議は傍聴できずじまい
きょう10月3日の初日は、一般会計の歳入と、特別会計(「国民健康保険事業特別会計」「老人保健医療特別会計」「介護保険事業特別会計」「後期高齢者医療特別会計」)の歳入・歳出について審議されました。しかし私が傍聴できたのは午後から行われる特別会計の審議だけ。午前中に行われた一般会計(歳入の部)審議の傍聴は、許されませんでした。
区議会事務局によると、私が傍聴できないのは以下の理由によるそうです。
・区役所の庁舎が、区民による傍聴がまだ制度化されていなかった古い時代に建てられたものであるため、委員会室が狭い。
・一般会計の歳出と特別会計に関しては、担当の部課長さえ揃っていれば委員の質問に答えられるので参加者がさほど多くない。ところが一般会計の歳入の場合、列席する担当者があまりに多いので、傍聴席を設けるスペースが物理的に確保できない。
ところが、会場となる委員会室を休憩時間中に覗いてみると、たくさんの椅子が並べられているものの案外ところどころ隙間もあり、若干名程度なら一般の傍聴者を入れることもできそうに見受けられました。本当にこれを「物理的に無理」と見ていいのか、かなり微妙なラインという気がします。
●撮影、録音は事実上禁止
事務局で傍聴の手続きをする際、傍聴者に向けた注意点が列挙された紙が配られていたので読んでみたのですが、そこには「傍聴席において写真、ビデオ、映画等を撮影し、又は録音しようとするときは、あらかじめ委員長の承認が必要です」と書かれていました。
これは素直に読むなら、「委員長の承認さえ得られれば、撮影、録音とも可能」という意味だと思います。ところが事務局に「委員長に撮影の申し込みをしたい」と申し入れたところ、断られてしまいました。
事務局の担当者によると、「各委員長が個別に対応した結果、撮影できた人もできない人も出てしまい不公平が生じる。だから実際は全ての委員会の共通認識として、『承認しない』ということになっている」とのことでした。イベントやシンポジウムの模様をツイッターで実況中継することを「tsudaる」と言うそうですが、こうしたネットを利用した審議内容の実況に関しても、「考え方は同じ」とのことでした。
●資料がなくてチンプンカンプン
私は過去にも江戸川区議会の「福祉健康委員会」と江戸川区教育委員会を一度ずつ傍聴したことがあり、この区での傍聴は今回で3度目です。福祉健康委員会の時は、傍聴者も委員が読んでいるのと同じ資料を審議中閲覧できたので、「どの委員が今どういうテーマについて発言しているのか」など、審議の内容に十分付いていくことができました。また、審議終了後に資料の写しを(有料ですが)貰えたので、後日審議の内容を他人に説明するのも簡単でした。しかし今日の決算特別委員会では、傍聴席に資料が何も置かれておらず、事務局いわく「写しの配布もしていない」とのことで、手元に何の資料もないまま審議を聴くことになりました。
特別会計の審議は午後2時20分、国民健康保険特別会計に関する審議から始まりました。以下、審議内容のうち、個人的に印象に残ったやりとりをほんの一部だけ記しますが……
(日本共産党江戸川区議員団所属の委員)
「国民件保険料の資格証の発行や差し押さえは区民の命に関わることであり、できればやるべきではない」
(それに対して担当の課長)
「資格証の発行、差し押さえともに、再三の連絡にもかかわらず応答のない人に対して、納付交渉を始めるための手段と位置づけています」
(区議会自由民主党所属の委員)
「国民健康保険料の徴収に関して課題はあるか」
(担当課長)
「3・11の大震災以降、仕事や収入が激減して払えないという人は増えています。ただ、中には明らかに震災以前から滞納しているのに、震災を理由に払わない人もいまして…」
(日本共産党江戸川区議員団の委員)
「(介護保険事業特別会計の歳入に関し)区の安定化基金を取り崩して介護保険料の軽減に充てる考えはないのか?」
(?)
「安定化基金の取り崩しは、自治体に負担を押し付けようとする現政権の実にずるいやり方。要は他人のフトコロ(に手を突っ込もうとしている)。けしからん!」(この発言を耳にした時、「この吠えている人だれ?」と思ったのですが、後で滝沢泰子区議に聞いたところ、多田正見区長だったようです)
私たち一般区民が区役所の窓口で職員と話す場合、彼らは大抵の場合は建前論しか話してくれないものですが、委員会の場で区議に対して話す内容は意外と本音がにじむ……というか、ぶっちゃけたトークが多いようです。こういうやりとりを聞けたのは、意外と新鮮でした(なお、江戸川区の国民健康保険収納率は「84%」とのことで、これは東京23区では上から3番目(直近2年)だそうです。意外、というと語弊がありますが、ずいぶんいいんじゃないでしょうか)。
とはいえ、ただでさえ専門的で難解な議題を、会場に並べられたパイプ椅子の最後列に座りながら委員や職員たちの顔も見えないまま、会場で交わされている声にのみ集中しながら理解するのはやはり相当にくたびれます。私も途中から集中力がもたなくなり、最初は取っていたメモも開始1時間くらいで止めてしまいました。傍聴席には私の他に2人の女性もいたのですが、私がメモを取るのをやめたあたりで彼女たちも帰ってしまいました。
正直なところ、特別会計の審議内容は専門的すぎて一般区民の関心は薄いだろうと思いますし(滝沢泰子区議の話では、非公開だった一般会計の審議はなかなか面白かったそうですが)、区議会事務局にしても、区民が傍聴することをほとんど想定していないように思えました。しかし話されている内容に価値がないわけではありませんし、むしろどれも区政の重要なテーマです。
私なんかとは違う、ちゃんと意識の高い区民が傍聴に来た時に備えて、あらかじめ資料の写しを渡せるように準備しておく、そのくらいの配慮はあっていいように思いました。